校長挨拶

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校長 笹倉 和幸

早稲田中学校は1895年(明治28年)、大隈重信の教育理念に基づき、坪内逍遙を中心として創設されました。1948年(昭和23年)には早稲田高等学校が設置されました。そして、両校は1993年(平成5年)からは高校募集のない6年間一貫教育制となり、2020年(令和2年)には創立125周年を迎えました。

よく知られているように、大隈重信が創設した早稲田大学の建学の精神は学問の独立です。そして、そのために必要なのは独立した精神をもった人間です。そこで、早稲田中学校・高等学校の教育目標は、独立した精神をもった人間の育成においています。これを実現させるために本校では「誠」・「個性」・「有為の人材」の3つを掲げています。「誠」という心の養成と、「個性」の伸長、そして人のために能力を発揮することができる「有為の人材」の3つが揃ってこそ人格の独立を確立することができると考えています。

「誠」は坪内逍遙によって校訓に掲げられたもので、一言でいえば、嘘をつかない、ということになるでしょう。これは普段の良好な人間関係を成立させるときの基本であるだけでなく、学問上の真理を探究する際の妥協を許さない真摯な態度にも当てはまります。多情多感な時期にある生徒一人一人の「個性」を団体生活の中で大きく育てることの重要性は教育者としての大隈重信の信念でありました。そして、才能豊かで、どのような分野、どのような地域においても社会に貢献できる「有為の人材」を輩出することを目標にしています。

中高一貫という安定した教育環境は、このような教育目標を達成するために大いに役立っています。20年後、30年後に世界の第一線で活躍できるジェントルマンを育てること、それが本校の教育の根幹です。

6年後の大学進学も視野に入れて、日々の学習カリキュラムは熱意あふれる教職員によって円滑に運営されています。しかし教室内の勉強だけで本校の教育目標が達成されるわけではありません。そのほかに、生徒会活動・クラブ活動、体育大会・文化祭(興風祭)、林間学校・スキー学校、オペラ鑑賞・歌舞伎鑑賞、利根川歩行・荒川歩行など数えきれない行事が生徒一人一人の人格形成のために用意されています。

早稲田高等学校の卒業生の約半数は推薦入学制度により早稲田大学の各学部に進学できます。また国公私立大学医学部や東京大学などの難関校にも毎年多くが進学しています。どのような進路を選ぶかは各人の判断に任されています。そして各人がその判断を自信をもってできるようになることが中高6年間の一貫教育の成果とも言えるでしょう。

2023年には、地上6階の新3号館(理科実験室、情報教室、学習室、売店)と地上6階地下1階の新興風館(プール、図書館、食堂、誠ホール、柔道場、剣道場、アリーナ、屋上運動場)が完成しました。両校舎の中間部分には6層吹き抜けのプラザを設けています。そして、両校舎と他の校舎を廊下で連結して校舎間の移動を容易にしたことにより、プラザを中心に中高生の盛んな交流が生み出されています。

大隈重信は、停滞は死滅である、と言いました。本校は創立150周年を見据え、伝統を継承するとともに時代の最新の変化を取り入れ、さらなる発展を続けます。

校長  川口 浩

本校は1895(明治28)年、大隈重信の教育理念にもとづき坪内逍遙らによって創設された、早稲田大学の附属・系属校の中でも最も古い伝統ある学校です。2020年11月には、創立125周年を迎えました。

日本の近代化に多大な貢献をした大隈重信ですが、彼が強い関心を持ち続けた分野の一つが教育です。1872(明治5)年という時期に、既に身分や男女の別を問わず、満6歳になれば全ての児童が学校に通うという、義務教育制度の実施を謳った「学制」の公布に力を注ぎました。10年後には、のちに「早稲田大学」となる高等教育機関としての東京専門学校を創設し、さらにその13年後に、中等教育機関としての「早稲田中学校」を創設したのです。

早稲田大学の建学精神が「学問の独立」であるのに対し、早稲田中学校では「人格の独立」を謳っています。特に言行一致という意味での「誠」を教育目標の中心として掲げ、生徒個々人のかけがえのない「個性」を伸ばしつつ、世界に貢献する「有為の人材」を育成することを理想としています。大隈の理念に即していえば、自立心を持ち、逆境にあってもますます勇壮な気概を抱くような人間を育てることが教育の使命であるということです。

本校は、中学高校6年間の完全一貫教育により、生徒の心身の自然な成長と、自らの意思に基づいた進路選択を可能にする学力の向上を目指しています。まず、人間として豊かであるために、知力、体力、感性等すべてにバランスのとれた素養を身に付けるためのカリキュラムや特別教育活動を編成しています。バランスのとれた深い教養を持ってこそ、生徒たちは卒業後、多方面で存分に活躍できると考えるからです。

本校が早稲田大学の系属校であることも特徴の一つです。早稲田大学の各学部に推薦で進むこともできますし、本人の希望次第で他のいかなる大学へ進学する道も開かれています。例年約半数の生徒が早稲田大学に推薦で進学し、他の生徒は早稲田大学や慶應義塾大学、国公立大学等に受験で進学しています。生徒は高校2年で文系理系に分かれますが、その後も文理の枠を超えて基本的に全教科を学びます。このような体制によって生徒の間に落ち着きと適度な緊張感が生まれると同時に、違和感なく互いを切磋琢磨し合うことが良質の教育効果をもたらす結果となっています。生徒は希望する大学や学部を自らの意思に基づいて決定するため、どの大学に何名合格したというようなことは重要視されません。多様な進路を希望する生徒が一つのクラスに混在していることも、個々の価値観を互いに尊重し、自らの希望にも挑戦するという相乗効果をもたらし、毎日の学校生活を伸び伸びと過ごす一因になっているのです。

生徒諸君の人格形成や躾についてはご家庭が基本です。しかしながら一日の約三分の一を過ごす学校という場の持つ影響ははかりしれません。毎日の学習はもとより自主的なクラブ活動、種々の学校行事などの集団生活を通してはじめて身に着く社会生活の基本を私たちは指導しつつ、生徒一人一人の個性に正面から向き合い、彼等の将来を見据えた指導を心掛けています。

中学高校という時期は、子供たちが大きく成長すると同時に、一方では青少年として悩みもがき続ける6年間でもあります。彼等がそれぞれの理想や希望に向かって大きく羽ばたけるよう、学校と家庭が力を合わせて進んで行きましょう。